第一章〜新しき調教の序説〜
第一章〜新しき調教の序説〜
毎日毎日、通っているペットショップがある。
FONDLINGという一風変わった名前のペットショップだ、個人経営の割には充実しており。
犬、猫、小動物はともかく熱帯魚やら爬虫類など多種多様のペットたちがいる。
ただ、このペットショップにはひとつだけ秘密があった。
「VIP ROOM」の存在だ。
何が秘密なのかというのは、通い始めや一般で入っただけの人間には教えられることのない部屋だということだけだ。
僕は、親父に連れてこられて、その部屋の存在を知って以来というもの、その部屋の秘密を知りたいのか、ペットたちがかわいくてきているのか、弱く力無い自分だけの生殺与奪権がある存在が欲しいのか。
どちらかはわからないが、毎日のように特にペットを買うわけでもなく立ち寄っていた。
高校2年生で、一般的で退屈でバカバカしい日常を送っていた。
ただ、退屈な理由はもう一つある。
僕が密かに想いを寄せていた女子生徒が1か月ほど前に、突然退学してしまったからだ。
彼女の行方は知らない。
知ろうともしなかった。
知ろうとしても意味もない労力を使うだけだし、また面白がったヤツらにいじられるだけだからだ。
ため息をついて何気に見ていたキレイなブロンドの毛をした犬をもう一度見る
気性が荒そうだが、凛とした様子は彼女に少し似ている気もする。
けれど、もう会うこともないのなら思い出す必要もないか。
忘れるべきかもしれないと思い帰ろうと踵を返し、ガラスから離れようとした時だ。
普段は声すら掛けてこない店長の物腰の柔らかな眼鏡の男性が声をかけてきた
「ブロンドがお好きですか?」
その優しい表情とは全く違い、黒く冷たい瞳が印象的で僕は店長の瞳を見つめたまま、その場に立ちすくんだ。
そしてやっとのことで
「え?どういう」
と、喉から零れるような小さな声で僕は応える
「いえ、この店に来るようになってから毎日その犬をよく見てらっしゃるから」
よく客の行動を見ているんだなと、感心させられながら僕は思ったままのことを答える
「ああ、なんとなく似ている人を知っていて気になっただけで、買いもしないのに迷惑ですよね」
自嘲じみた笑みを浮かべたが、店長の笑顔だというのにどこかほの暗さが見え隠れする表情には居心地の悪さを感じさせられ、ふたたび僕はその場を離れて帰ろうとする。
「いえ、そういう意味では・・・・・・・ところですごいですね。あなたのお父様から聞いていたのですが、お客様は乗馬で賞をとったとか?」
それに気がついたのか、帰ろうとする僕を止めるように急に彼の口から数ヶ月前の話を持ち出される
「・・・ああ、どうなんでしょうね。父が馬が好きで始めただけで、父が喜ぶほど上手でもないんですよ」
謙遜でもなくただの感想としてつまらなさそうに僕は呟く
「いえ、ご立派だと思いますよ。それより、その犬ではありませんが、あなたが必ず気に入りそうな「愛玩動物」をお父様に頼まれて今日の日まで預かっていたのですが見てみませんか?」
試すような微笑みを浮かべながら彼は僕を見つめている
「・・・・・・?犬ですか、父は動物は馬以外では番犬以外興味がないと思っていましたが」
父が僕のために頼んでいたとしても、この店長は何故僕が必ず気に入るというのだろうか?
と、疑問に思いながら僕は返事をする
「いえ、あなたの入賞祝いの「ペット」らしいですからいいのを選んでくださいましたよ」
「へぇ・・・僕にですか?馬以外に動物をくれるなんて初めてだな」
見透かされた嫌味に対し、苦笑じみた笑みを浮かべた僕は彼に引率され、例の「VIP ROOM」の前に来る
「あ・・・・・・」
「どうしました?」
「いえ、ここは立ち入り禁止なのでは?」
「いえ”特別な”お客様のための部屋ですから貴方には権利があります」
「特別?予約していたとか。そういう意味ですか?」
意味がわからず僕は首をかしげるが含んだ微笑みを浮かべながら彼は暗い部屋の扉はゆっくりと重い音を立てて開かれ
そして、その暗く長細い部屋が僕の目の前に現れたのだった・・・そして・・・そこには・・・
十数個の大型動物のゲージに、制服姿に目隠し、猿轡をされた少女や、裸体にいろいろな模様を彫りこんだ少女や、縄で縛られながらも反抗してる少年などもいる。
つまり、生きた人間という名の美術品の数々が宝石のようにまばゆい、もしくは妖艶な姿で飾られていた。
暗い部屋の奥へと歩いていくと一段高くなったワインレッドの絨毯が引かれたステージにのせられ、裸体で拘束具で両手首を足の下で上からつるされたロープで拘束され、赤い首輪に短い鎖をつながれた状態で上体を低く、腰をあげ尻の穴から陰部にかけてまでよく見えるような体勢で、両足は若干開脚するように器具で固定されている。
布でできた猿轡をくわえさせられたブロンド髪の赤いリボンが似合うエメラルド色の瞳をした見覚えのある少女がいた。
「久我咲さん・・・」
僕の口から僕の前から消えた想いを寄せていた少女の名前はこぼれおちる
伏せられていた長い睫毛がゆっくりとあがり綺麗な瞳がよく見えるように見開かれ僕を凝視している。
「よかったですね、ハルカご主人さまが来てくださいましたよ」
「え?」
自由を奪われ顔を横に振り暴れようとする少女の髪を乱暴に鷲掴みしながら、正反対の優しい口調で話しかけている。
ポカンとする僕に対し、振り返ると
「すみません、1か月であなた好みの犬に調教するように予定していたのですが、どうもこちらの雌犬は売られたというのに聞き分けが悪く育ちも悪いようで調教が必要なようですね、手間取らせてしまいます。現在すぐに飼っていただくこともできるのですが、レンタルなどで様子をみてくれてくださることも可能ですが」
「いや・・・でも」
レンタルや飼うという意味がうまく飲み込めず僕は少し尻ごみする。
「いらないのなら、捨てることも転売もできますし御返金することもできます」
冷たい一言に僕は思わず
「システムがどういうとかそういうのじゃなくて、彼女はそのクラスメイトで……」
この地点では彼女を自由にしようとする意思がなかったわけでもない。
だから助け船を出すつもりでかすれる声を出したのだ
「ええ、ですがもうこの雌はあなたと対等な地位を持っておりませんから。お好きなようにご調教ください」
「は・・・はい?」
「ただ、甘やかしすぎないでくださいね。もし返品なさった時は再調教が必要となりますから」
にこりと微笑む店長の瞳には先ほど感じた冷たいほの暗さが見えていた。
「はい・・・」
その様子に押されるようにつばを飲み込みながら髪を掴まれたせいで乱れた長い髪を床につけて
荒い呼吸する彼女に近づいていく
「だ、大丈夫?」
とりあえず首の鎖を床からはずして猿轡をはずしてやるとギラギラと敵意をこめた瞳でキッと僕を睨むなり顔に唾を吐きつけてられた。
「下衆男・・・、女みたいな顔して裏ではあんたもサイッテーなことしてるのね。ああ、あなたみたいな男女じゃあ女が踏んでもらう位しか使い道ないから、こういう下衆な真似でもするのね」
吐き捨てられた言葉と、自分が助けようとしたことに対する反応が蔑まれたことに傷ついた。
いや、傷ついた・・・・・・というよりは遠くから見つめていた清楚な彼女とは違い
汚い言葉を吐き出すこの目の前の存在が何だったのかが一瞬で真っ白にされた頭に砕け落ちるように想いや逃がそうとする優しさは打ち消されていく。
目の前にいるゲージの中で大人しくしている作品たちとは大違いな「雌犬」に対する怒りが急に湧いてきた。
僕は彼女の髪を店長がしたように鷲掴みにしてつかみ上げた
「きゃぁっ」
痛みに顔をゆがませて反抗していた「憧れだった久我咲さん」だった雌犬が悲鳴を上げる
「ねぇ、店長さん調教って何をすればいいんですか?」
僕の視界はなんだか暗くなっていく、心の中にどんどん黒く渦巻く人間らしい本能のような、禍々しい気持ちに今この瞬間まで存在した「久我咲さんに恋をした男」だったぼくは消え去った
「なんでも、いいですよ。この子たちのようにしたいのならここにある道具は何でも貸して差し上げます、取り寄せも行えますよ?」
ニコリとほほ笑む店長が開いたカーテンの先には色々な調教道具が広がっている
「い・・・いやっ・・・ふざけんじゃないわよ!チンカス男女!」
恐怖でひきつるクガサキハルカという名前だった雌犬の髪を僕は、さらに強い力で掴み上げる
「お前には聞いてないの?僕は店長さんと話しているんですよ。礼儀もわきまえず、少しも静かにできないのかお前は・・・・・・」
どんどん高揚していく気分に呑まれていく僕は無意識に微笑んでいる。
そして、店長さんが
「乗馬なさっているんです。手始めに乗馬鞭をお使いになりますか?」
「やだ!ほんとに!やぁっ」
体を遠ざけようと髪を掴まれてるにも構わずに暴れる雌犬に対し、僕は手近にあった乗馬鞭で双丘と垣間見える陰部の一番敏感な場所を強く叩きつけた。
「ヒグゥ!!!!」
思わずこぼれるらしき声を無視しながら店長にもう一度視線を戻す
「ありがとうございます。レンタルでイロイロと試させていただいてから買わせていただきますね」
と、僕は今までにないような屈折と邪気を孕んだ気持ちとは別に高ぶった感情を胸に微笑みながら立ちあがり、皮は裂けなかったものの、一度手加減したとはいえ乗馬鞭で強く叩かれたハルカはスンスンと鼻水や涎や尿、愛液とあらゆる分泌液を垂れ流し許しを乞うように。
先ほどとは違い怯え、服従をするフリをしながら愛らしい目でこちらをうかがう。
痛みで僕を見ているのか、飼い主にしなければもっとひどい目にあうことを予測したのか
どちらかはわからないが僕はハルカという雌犬をその日手に入れ、大切に大切に壊していく玩具のような存在を手に入れたのだった。





